個別避難計画講演会

更新日:2023年11月15日

個別避難計画講演会

誰一人取り残さない防災に向けて~わたしたちが身につけるべきこと~

個別避難計画講演会チラシ

概要

日時 令和5年10月7日(土曜日)午後1時30分~午後4時
場所 文化センター 1階ホール
対象 個別避難計画に関心がある方、福祉専門職の方
定員 200名(先着順)
講師

同志社大学社会学部教授 同志社大学インクルーシブ防災研究センター

センター長 立木 茂雄 氏

 

【講演会は終了しました】申込

令和5年9月29日(金曜日)までに電話、ファックス、あいち電子申請システム、申込用紙より申し込み

(注)あいち電子申請システムをご利用の場合は申込完了メールが届いていることを確認してください

(注)申込用紙はふくし課または町内公共施設などで配布しています

参加者の質問に対するコメント

たくさんの質問ありがとうございました。講演会の際も周知させていただきましたが、すべての質問に対して回答することは出来ませんので、予めご了承ください。講演会中に講師が回答した質問については掲載しておりません。

脆弱性について

(問)各地域で要介護者対応が可能か、(環境や設備等)実際の避難訓練に要介護者は参加可能かを知りたいです。

(問)社会の脆弱性を無くすため、ハザードマップにある危険地を放棄する事は出来ますか。戸建て建築の禁止等、経済活動との兼ね合いはどうなりますか。

(問)支援者として悩ましいのは当事者の状況により参加できる活動範囲に差があるが、災害時ケアプランの作成を求める声は先延ばしにはできません。優先順位を付けざるを得ない状況ですが、計画の作成にあたり当事者への説明がとても敏感な部分だと感じます。当事者への一般的な説明材料等、先生のこれまでのご経験からご助言をいただきたいです。

 

(答)個別計画作成の優先度は、一人ひとりの社会的脆弱性に基づいて求める必要があります。具体的には1.当事者の日常生活動作(ADL)の困難さ、2.社会的孤立度(いざという時に頼れる人がいない)、3.ハザード域内在住、という3要素のかけ算として求めます。このうち、福祉専門職の力量が一番発揮できるのが2.社会的孤立の程度の見立てです。これを出発点に、要介護度(ADL)等の指標とのかけ算を行い、その上で利用者がハザード域内在住かどうかについて、域内在住であれば1を、域外在住であれば0をかける、ことで求まります。より詳細な説明は、以下の論文を参考にしてください。

森保 純子, 川見 文紀, 鈴木 進吾, 辻岡 綾, 立木 茂雄著「個別避難計画作成に関する外的基準を考慮した優先度推定手法―福祉専門職の視点から「真に支援が必要な方」を探る―」地域安全学会論文集, 41 巻 (2022), 51-61ページhttps://doi.org/10.11314/jisss.41.51

制度について

(問)災害時ケアプランを作成するケアマネジャーが不足しています。他の業務と兼務しているケアマネジャー等の潜在ケアマネジャーの活用などの解消するための事例等があれば教えてほしいです。

(問)自主防災会はどのくらいの規模が活動しやすいと思いますか。要支援者、要介護者の救護にあたり情報を公開していない方の安否確認はどの様に行えば良いですか。

(問)行政、福祉、当事者、地域住民、それぞれがたこつぼから出やすい環境はどうすれば作ることが出来ますか。

(問)福祉専門職の日常のケアプランの延長線上の新たな仕事として個別避難計画策定に活かされていますか。また、どのような位置づけで制度化されていますか。

 

(答)一人のケアマネジャーが担当するケース数は40名未満と定められています。従って、介護保険サービスを利用している人から見ればケアマネージャーの人数にばらつきはありません。ただし、サービス提供事業者は、同一自治体内である必要はないので、同じ地区に在住でも、他自治体の事業者が混じっていることもあり得ます。このため、近隣の自治体で歩調を合わせて災害時ケアプランづくりを協働で進めていることが大切です。「ケアマネジャーが足りない」という声について、もう一言申しあげるなら、災害時ケアプランの作成が急務で求められているのは、脆弱性のコメントでも申しあげた通り、1.心身の状況の課題(要介護度や日常生活動作(ADL)の支障の程度)×2.社会的孤立度×3.ハザード域内か否か、のかけ算で求まる社会的脆弱性の高い利用者です。これまでの経験からすると、一人のケアマネジャーの担当ケースのうち、災害時ケアプランづくりを今すぐに進める必要のある利用者は、(地域により変動はありますが)多くても、平均すれば担当ケースのうちの2割程度であると考えられます。結局のところ、2021(令和3)年5月の災害対策基本法の改正により、向こう五年間での個別避難計画作成の努力義務化の対象として計画作成の優先度が定められているのは、このおおよそ2割程度の利用者になると考えています。

このように優先的な災害時ケアプランづくりを進めていくためには、行政の防災部局や福祉部局、民間の社会福祉協議会や社会福祉事業者、そして地域の自治会・庁内会など、これまではそれぞれの部局や組織で単独に進めてきた業務を相互に越境しながら組織を連結させることが必要となってきます。このような業務を主担で担う「インクルージョン・マネージャー」が関与することが肝要です。そしてなにより、役所内外の部局・組織を越境して連結をはかるインクルージョン・マネジャーの背中を押し、追い風となる態勢を整えるトップの判断が必要となります。インクルージョン・マネージャーの詳細は以下の論文を参照してください。

辻岡 綾, 藤本 慎也, 川見 文紀, 松川 杏寧, 立木 茂雄.「インクルージョン・マネージャーに特徴的なコンピテンシーの考察〜データ対話型理論を用いた分析〜」『地域安全学会論文集』2021 年 39 巻 p. 351-361

https://doi.org/10.11314/jisss.39.351

当事者力、個別性、リテラシーについて

(問)地域力アセスメントが重要だと思います。要配慮者に必要な地域力をどのように発掘、作り上げていくか、有効な手法や事例があれば教えてほしいです。

(問)災害時ケアプラン調整会議は対象者ごとに実施するものですか。参加する地域の人にとっては負担になると感じますが実際はどのようにしていますか。

(問)防災リテラシーが低いと思われる方、受け入れの難しい方への対応方法はどのような具体例があるか教えてください。

(問)当事者や地域の方が防災意識を高めるためにはどうすれば良いと思われますか。

(問)支援者として悩ましいのは、災害対応について当事者の方の認識は受け身の方が多いことです。当事者力を高めるように求めることが、当事者の自己責任として突き放されてしまったように認識されてしまわないか不安もあります。先生のこれまでのご経験からご助言をいただけきたいです。

 

(答)地域力の発掘・アセスメント:これは「餅は餅屋に聞く」のが鉄則です。このために、自治会・町内会・自主防災組織と日常から接している防災・危機管理の担当者、あるいは協働のまちづくり担当者といった方々を介して地域のキーパーソンのところに越境していくことが第一歩になります。

また、地域力は住民・自治組織の役員や関係者が汗をかいて努力をすれば高まることが分かっています。具体的には、1.年齢、性別、住民・事業者かなどで多用な住民が参加するように計画すること、2.地域のまつりの中に地域課題に住民が気づいてもらえるような仕掛けを組み込むこと、3.自治会・町内会の会長が定期的に替わっても事業が継続されるような工夫(ハンドブックや申し送りリストなど)をしていること、4.「地域の歴史や売り、珍しい人」などの情報発信を自治会・町内会単位で行って、住民の興味や愛着を喚起すること、5.役員からつとめて住民同士であいさつをする運動を行うこと、といった5つの軸です。具体的な点については、以下をご覧下さい。

立木茂雄・松川杏寧「ソーシャルキャピタルの視点から見た地域コミュニティの活性度と安全・安心(最新報)」 『都市問題研究』(大阪市)2012年春号, 2012年3月, pp.30-56.

https://www.tatsuki.org/papers/Toshimondai_Kenkyu/Tatsuki_Matsukawa2012.pdf

立木茂雄NPO・ボランティア研究 「ソーシャルキャピタルの視点から見た地域コミュニティの活性度と安全・安心」 『都市問題研究』(都市問題研究会)60, 5, 2008年5月, pp. 50-73.

https://www.tatsuki.org/papers/Toshimondai_Kenkyu/SocialCapital&Safety2008.pdf

災害時ケアプランの対象・地域調整会議の進め方:災害時ケアプランづくりは、1.自分や家族でつくる(セルフプラン)、2.地域で相談してつくる(地域プラン)、3.行政の福祉部局・防災部局が共同し、福祉専門職も業務として関わってつくる(行政主導プラン)の3つのレベルに別れます。行政主導・専門職も関わってプランを作る対象者は、「支援計画作成の優先度の高い」方になります。詳しくは、「コメント#1」を参考にしてください。なお、先行している別府市では、1回の地域調整会議に複数の方の災害時ケアプランを作っています。最初は、一つのプランの作成に時間がかかっていましたが、慣れて来ると省力化されるようになっています。

接近困難な人への対応:まわりからの支援の受け入れが難しい方々と日々接している人たちが自治体や関係機関にはいます。たとえば生活困窮者自立支援、児童虐待防止、DV防止といった部署の担当者です。やはり「餅は餅屋」で、接近困難な人への対応については、周囲にいる関係者に教えを請うたり、チームに関わってもらうことが大切です。特に生活困窮者自立支援の取組では、当事者の伴走者となって、地域や行政との関わりに絶えず寄り添ってくれる専門職の存在が重要です。

計画策定、避難訓練について

(問)避難行動要支援者に登録されていても、地域の人に周知されていないため、対応方法が分からない。行政+社協+地域(自主防災会)との連携づくりの補助をお願いしたいが、今後どのように進めていけば良いでしょうか。災害は地域の人全員に及ぶことであり、全員が被災者になることを踏まえた防災訓練の在り方を教えてください。

 

(答)避難行動要支援者に対する対策は、平成の時代の取組は名簿を作って、地域で解決をお願いする、というものでした。しかしながら令和5年の災害対策基本法の改正後の令和の対策では、特に計画作成の優先度の高い方については、「行政+社協+地元(自主防災会)との連携づくり」は行政主導ですすめることが明記されました。行政に求められている手順は、「内閣府 防災 避難行動要支援者」と3つのキーワードで検索をすると最初に表示される以下の取組指針に示されています。

https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/youengosya/r3/pdf/shishin0304.pdf

計画作成優先度の高い方については、取組指針の19ページに示された7つのステップによる段取りで計画作成を進めることが努力義務化されています。このなかで「行政+社協+地元(自主防災会)との連携づくり」は、ステップ1として、行政が自ら汗をかいて体制を整備しなければなりません。また、ステップ6は地域調整会議を通じた計画の作成ですが、この会議を開催するための裏方の努力は社会福祉協議会といった事業の委託先だけではなく、防災部局・福祉部局の職員が合同で進めなければ実現しません。そして、段取りの最後のステップ7では、個別避難計画のシミュレーションを必ず地域の総合防災訓練などのなかに入れこんで進めることになっています。

この記事に関するお問い合わせ先

ふくし課 社会高齢係
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電話番号:0562-83-3111
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